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田中たかあきブログ

当たり前のことや基本をしっかりやることを大切にしてます。

日本国憲法が死んでいる理由

こんにちは、田中です。

「日本国憲法はもう死んでる」と、政治経済学者の小室直樹は『痛快!憲法学』の中で言っています。

「日本の憲法はもう死んでる?北斗の拳じゃないんだから。死ぬわけないだろ」

あなたはそう思ったかもしれません。

 

たしかに、憲法の以外の法律(刑法や民法)は、一度作られたら、議会で廃止されたり違憲判決を裁判所から下されないかぎり、生き続けます。

しかし憲法は違います

 

憲法は、公式に「廃止する」と宣言しなくても、死んでしまうことがある、と小室直樹は『痛快!憲法学』のなかで述べています(彼の主張が正しいかはともかく)。

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死んでしまった憲法の具体例:ワイマール憲法

例えば、ドイツのワイマール憲法ってありますよね。

この憲法は当時、「世界で最も進んだ憲法」と言われてました。

 

「ドイツの憲法こそ20世紀の憲法の手本だ」と言われていたくらいです。

 

しかし、ワイマール憲法はあっけなく死んでしまった

大きな影響を与えたのが、ヒトラーです。

 

実はヒトラーは、ワイマール憲法にまったく手をつけてません。

彼は、憲法を廃止していないんです。

 

むしろ、ヒトラーなどのナチスは、ワイマール憲法にしたがって行動し、政権をとった。

 

しかし、ワイマール憲法は1933年3月23日に死んだ、と多くの憲法学者は考えます。

なぜならこの日に、全権委任法という重要な法案が、ドイツ議会で可決されたから。

 

全権委任法は、法律を制定する権利(立法権)を政府に全部与える、という法律。

この法律が可決されたことにより、ヒトラーは自分が欲しい法律を作り、その法を執行することができるようになりました。

 

つまり、全権委任法の後ろ盾によって、ヒトラーは合法的にドイツの独裁者になった

 

 この場合、憲法学者は「ワイマール憲法違反だから、全権委任法は無効だ」とは考えない、と小室直樹は言います。

そうではなく、「1933年3月23日にワイマール憲法は死んだ」と考えるそうです。

 

憲法は慣習によって存在する

憲法は、文章に書いてあるから存在するんじゃなく、人々の慣習によって存在する、と小室直樹は言います。

 

これは難しく言うと、憲法の本質は成文法ではなく慣習法である、ということ。

 

憲法で大事なのは文面ではなく、人々の慣習だと小室は考えます。

たとえ憲法が廃止されなくても、憲法の精神が無視されたら、その憲法は実質的な効力を失ってしまった=死んだと考えるのが、憲法学の考え方だそうです。

 

憲法の精神がなくなったときに、憲法は死ぬということです。

それゆえ、憲法はひ弱な生き物です。

小室によれば、民主主義の国でも、憲法が死ぬことが珍しいことじゃないそうです。

 

アメリカの憲法も昔は死んでいた?

アメリカの独立宣言は近代デモクラシーの出発点であり、暗記すべき大切なものだと小室は言います。

 

しかし、そのアメリカの憲法も最初は死んでいた、正確には半死半生だったそうです。

なぜなら、最初のころ、アメリカ合衆国憲法には人権を保障する「権利の章典」がなかったから。

 

万民に人権があると独立宣言で言ってるのに、その権利を保障する権利章典がなかった。

最初の憲法には、信仰の自由も言論の自由も明記されていなかった。

それゆえ小室直樹は、最初の合衆国憲法は欠陥があったと言います。

 

当時のアメリカの憲法は生きているとは言えない、と彼は言います。

 

実際、先住民のインディアンが白人たちに受けたことを見ればそれがわかる、と彼は言います。

 

アメリカ先住民たちは皆殺しされた。

ハリウッドの西部劇では、いきなり先住民が白人を襲ったという話になってるけど、そんなのは大嘘だと小室は言います(本当かは疑問)。

小室は、あれは白人たちがしかけた戦争だと言ってます。

 

その証拠として、小室はベンジャミン・フランクリンがフランスの友人に書いた手紙について言及している。

 

「インディアンと白人との間に戦われた戦争のほとんど全部は、白人がインディアンに対して何らかの不正を行ったことから始まったものなのです」(猿谷要『物語アメリカの歴史』中公新書)

 

すべての人は平等に造られている」と言いながら、先住民の人権を考えていないと、小室は指摘している(私はそうは思わないが)。

 

私自身の意見では、最初から何事も完璧にはいかないので、しょうがないじゃん、だんだん改良すればいいじゃん、と思いますが。

そもそも、小室さんは「憲法とは文面じゃなく慣習によって存在する」と言ってるのだから、権利章典がなくても憲法としては問題ないのでは?と疑問です。

 

それに、インディアンの人権が考えられていなかったというけど、その当時はインディアンは敵だとみなされていたのだから、アメリカの憲法が矛盾していたわけではない。

 

誰を身内(味方)と考え、誰を外(敵)と線引きするかは、決着がつかない問題だ。

 

さらに小室直樹は、アメリカの憲法が死んでた具体例として、黒人奴隷の問題について書いてます。

 

彼が言うには、実はアメリカの奴隷制度は、合衆国が建国された後、ますます盛んになっていたらしい(本当かは疑問)。

 

なぜなら、当時の19世紀初頭になって、産業革命の影響で、イギリスで綿の需要が急増したから。

そして、綿の供給地だった南部の州では人手不足になったからです。

 

綿の生産をする人手が足りない、だからアフリカ大陸から船に黒人をのせて、奴隷を輸入した。

アメリカに来た奴隷の数は、1300万とか1500万と言われているらしい。

 

例えば、初代の大統領ワシントンや、3代目のジェファーソンも、大農場のオーナーであり、彼ら自身多くの黒人奴隷を持っていました(当時は人種意識が違っていたので単純に批判することはできませんが)。

 

ゴールドラッシュは他人の土地の不法占拠だった

別の具体例として、20世紀の伝記作家シュテファン・ツヴァイクは『人類の星の時間』の中で、アメリカのある実話について語っています。

 

合衆国の建国から60年後の1834年に、ヨ―ハン・アウグスト・ズーターというドイツ人がアメリカに移住しました。

 

彼はニューヨークでお金を貯めたあと、当時まだ未開の地だったカリフォルニアに移住しました。

そして彼は農場経営に成功し、土地を耕し、井戸をつくり、数千頭の家畜を育てることができるようになった。

ヨーロッパに残してきた妻と子どもも呼んできました。

 

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しかし、順風満帆な彼に、事件が起こった。

1848年1月に、彼が雇っていた大工が、彼の農園で砂金を発見したんです!

実は、彼の農園の流れる運河に砂金がいっぱいあることが分かった。

 

ズーターは、自分の農園に砂金が見つかり、大金持ちになった、はずだった。

でも、実際はそうならなかった。

 

彼の農園に砂金があることは、周りの人たちにあっとういまに広がってしまった。

ズーターの農園で働いていた人たちは仕事をしないで、農園の砂金探しをはじめた。

さらに、関係ない人たちがアメリカの各地から、砂金を探すためにズーターの農園に殺到したのだ。

 

砂金を探しにやってきた彼らは、ズーターが農園で育てていた乳牛を殺して食べた。

さらに、彼らはズーターの建てた穀物倉庫を破壊して、自分たちの家を建てた。

 

ズーターが耕した農地は踏み荒らされ、高い金で買った機械は盗まれた。

ズーターの所有地は、多くの人たち(1万7220人)によって不法占拠され、だんだんと町がつくられていった。

 

その町の名前はサン・フランシスコ

 

あの有名な「ゴールド・ラッシュ」はドイツ系移民ズーターの農園で起きたことだった。

そして、ズーターの所有地を不法占拠してつくった町こそ、サン・フランシスコだ。

 

ズーターは裁判所に訴え、裁判所はカリフォルニア州政府に2500万ドルの賠償金を要求した。

 

しかし、その判決を聞いたサン・フランシスコの不法占拠した人たちは、暴動を起こし、ズーターは財産を奪われたり次男を殺されたりしました。

 

この台暴動が起こった後、アメリカ政府はズーターに何もしてあげなかった。

ズーターはワシントンの政治家たちに、自分の権利を主張し続けたがダメだった。

 

ズーターはワシントンの人たちから嘲笑され、無視され、失意のなか脳卒中で死んだ。

 

アメリカ人の努力によって憲法は復活した

このように、アメリカですら、最初は憲法がうまく機能しなかった。

そのあと、アメリカの憲法は、アメリカ国民の努力によって、生命を吹き返すのだ。

 

アメリカ人は、過去の失敗を繰り返さないために、多くの努力をしてきた。

 

アメリカ人たちは、自分たちの憲法がただの紙切れにすぎないことを自覚していた。

だからこそ、彼らは必死に憲法の精神を守る努力をしてきた。

 

私自身、そこがアメリカ人の偉大なところだと思う

 

どんなに立派な独立宣言があって、憲法の条文があっても、慣習がなければ、憲法はただの紙切れであると、小室直樹は言う。

 

それゆえ、憲法を生かすも殺すも、国民次第なのだと小室は言う。

 

小室直樹は、現代の日本の憲法は死んでいると書いている。

それどころか、現代日本には民主主義もなく、資本主義もない(ホントかよ、という感じだが)と彼は言う。

日本には憲法はない、と。

 

小室が言うように、日本国憲法は本当に死んでいるのか?

そもそも、憲法がうまく機能するためには、何が必要なのか。

権力が必要かもしれません。

経済力や軍事力など、いろんな力が。