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田中たかあきブログ

当たり前のことや基本をしっかりやることを大切にしてます。

誰のために法律はあるのか?

こんにちは、田中です。

今日のテーマは、「誰のために法律はあるのか?」です。

 

「誰のために?フン。日本の法律なら日本人にたいして書かれたものだろ?」

私もそう思ってました。

 

でも、正確には、ちょっと違うみたいです。

法律の種類によって、誰のために書かれたものか変わるみたいなんです。

 

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そもそも法とは何か?

まず、法とは何か、定義する必要があります。

法には、憲法と法律の2種類があるが、

シンプルに言うと、法とは、誰かに対して書かれた強制的な命令である

 

「守ってもいいし、守らなくてもいい」という法律はない。

法で決められたことは、必ず守る必要がある

法を守らなかったら違反。罰が与えらえることもありますよね。

 

このとき大切なことは、「誰が誰に対して命令するか」ということ。

 

法のなかでも、法律のばあいは、「誰が」命令するかはわかりやすいですよね。

そう、国家権力です。

法律は国家権力が命令する

 

では、「誰に」命令するのか?

これは、それぞれの法律で違う

国民一般にたいして命令する法律もあるし、限定された人に命令する法律もある。

 

小室直樹によれば、ある法律が、誰に対する命令なのかを区別する基準がある。

その基準とは、「その法を違反できるのは誰か」を考えることです。

 

具体例1:銀行法

例えば、銀行法。

銀行法を違反できるのは誰か?というと、銀行です。

あなたや私のような、お金を預ける人が、銀行法に違反することはありません。

たとえ銀行から借金してても、銀行法で訴えられることはない。

 

それゆえ、銀行法とは、銀行に対する命令なのです。

 

具体例2:民法の場合

他の具体例として、民法を考えてみよう。

民法の条文には、次のように書いてある。

「男は、満18歳に、女は、満16歳にならなければ、婚姻をすることができない」(第73条)

 

この条文を見るとわかるように、民法は国民全員に対する命令です。

 

具体例3:刑法

民法と違って、刑法は国民に対して書かれた命令ではない、と小室直樹は言っている(かなり疑問があるが)。

さらに、犯罪者や犯罪予備軍に対して書かれた命令でもない

 

刑法は〇〇〇に対する命令!?

小室によれば、そのことは刑法の条文を見ればすぐにわかるという。

刑法のどこにも、「人のものを盗んではいけない」とか「人を殺してはいけない」とは書いてない。

 

例えば、殺人の項。

「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは3年以上の懲役に処する」(第199条)

 

どこにも、人を殺すなとは書いてない、と小室は主張する。

論理的には、誰かが人を殺しても窃盗をしても、その人は刑法に違反しない。

それゆえ、刑法は国民を対象にしてない、近代刑法では、殺人や窃盗を禁じてない、と小室は言う。

 

話はずれるが、私は小室のこの考えには反対だ

刑法とは国民に対する命令である、と私は考えている

 

話を戻そう、では、小室によれば、刑法に違反できるのは誰なのか

それは裁判官だけである、と小室直樹は主張している。

 

刑法とは、裁判官を縛るための法律であり、刑法を破ることができるのは、裁判官だけだと彼は言う。

 

例えば、殺人を犯した人に対して、裁判官が有罪判決を下して、「懲役1年に処す」と言ったら、その裁判官は刑法違反である。

なぜなら、「殺人罪には、死刑か無期、または3年以上の懲役を与えよ」と刑法は命令してるから。

あるいは、窃盗罪に対して死刑を宣告するのも刑法違反。

 

刑を与えることができるのは裁判官だけ

だから、刑法とは裁判官に対する命令である、と小室は考える。

 

ちなみに、裁判官は法律に定められてない罪を作ってはいけない

どんなに非道徳な行為であっても、刑法に書かれてないなら裁いちゃダメ。

 

後で作った法律で人を裁いてはいけない

加えて、裁判官は、後から作られた法律を使って人を裁いてはいけない(後から作られた法律のことを事後法という)。

 つまり、ある行為が、その当時の法律の基準で犯罪ではないなら、後から作った法律をその行為に適用してはいけない、ということ。

 

後から作った法律で人を罰してはいけない、という考えを、罪刑法定主義と言います。

罪刑法定主義は、近代裁判制度の根幹です。

 このことは別の記事で詳しく書きます。

 

刑事訴訟法は誰に対する命令?

次に、刑事訴訟法は誰に対する命令だろうか。

 

「フッ、 刑事事件の訴訟に関係する法律だから、検察官に対する命令だろ?」

そうです、たしかにそれも含みます。

そしてより正確に言うと、刑事訴訟法は、行政権力に対する命令です。

 

検察官だけでなく、行政府全体に対する命令が、刑事訴訟法。

例えば、警察官や法務大臣、総理大臣などの人は全て、刑事訴訟法に従う必要がある。

 

この刑事訴訟法は、実は刑法より大事な法律だと小室は言う。

なぜなら、この法律は、刑事裁判で、検事やすべての行政権力を縛るルールだから。

 

刑事訴訟法に少しでも違反したら、被告はただちに無罪になる

この話は、次の記事で詳しく書こうと思う。

 

検察官を信頼しすぎる日本人

ちなみに、裁判官は司法権に属するのに対し、検察官は行政権に属する

つまり、裁判官と検察官は、属するところが全く違う。

検察官は政府の一員だ。

 

にもかかわらず、日本人は、政府の一員である検察官を信頼して疑わない、と小室直樹は指摘している。

特に、新聞やテレビなどのマスコミは、検察が調べて発表したことを、最初から真実だと決めつけて報道する。

これは、民主主義を理解していない証拠だと、小室直樹は指摘している(耳が痛いです、はい)。

 

以上のように、法律とは、正確には、それぞれの法律ごとによって、誰に対する命令であるかが変わるかもしれないのです。

 

参考文献:小室直樹『痛快!憲法学』、集英社、2001年